今回の談合事件についての捜査よりも早く、公取委は昨年夏からオリンピックのスポンサー契約をめぐる贈収賄問題について捜査を進めてきた【図②参照】。ここでも、大会組織委と電通がズブズブの関係で繋がっていたことが明らかになった。そのパイプ役として暗躍していたのが、大会組織委元理事であり、電通OBの高橋治之容疑者だ。高橋元理事には、いくつもの企業が大会スポンサー契約に有利なとり計らいを受けるために多額の賄賂を渡し、高橋元理事は贈賄企業にスポンサー契約が決まるよう、組織委に働きかける役目を負っていた。
こうした一連の贈収賄事件をめぐり、高橋元理事は計4回逮捕されている。最終的にこの汚職事件では、収賄側3人、贈賄側12人が起訴されることとなった。
また、AOKI ホールディングスの青木前会長は、当時大会組織委会長だった森喜朗氏にも「がん治療の見舞金」として200万円を手渡している。スポンサー選定などをめぐる権限は森喜朗氏に集中しており、本人も「スポンサー決定は、理事会の決議により会長の私に一任されていた」とのべている。スポンサー探しや交渉、電通とのやりとりなどは、高橋元理事や組織委職員がおこない、森喜朗氏が了承する関係だった。
電通OBの高橋元理事が贈収賄をめぐる中心人物であったことは間違いないが、こうした汚れたカネの動きを、当時組織委会長だった森喜朗がまったく知らなかったというのは無理がある。青木前会長から受けとった200万円についても、会長の職務に対する便宜への対価として受けとったとなると、収賄罪、受託収賄罪に該当する可能性もある。昨年末から、公取委や特捜部が本腰を入れた捜査を展開しているなかで、界隈では「狙いは電通や森喜朗」だともいわれていたという。今回、電通は談合事件をめぐって幹部が逮捕・起訴され、法人としても刑事告発・起訴されている。特捜部が今後「本丸」の森喜朗まで切り込むかどうかも注目されている。
被害者面する国や都 大会開催の資格あるか
オリンピック談合事件をめぐり、岸田首相は1日、文部科学省など14府省庁が電通、セレスポ、フジクリエイティブコーポレーションの3社に対して入札参加資格を停止する措置をとったと説明した。指名停止期間は先月15日から9カ月間としている。
また、文部科学省は3日、談合や汚職事件に絡み、博報堂、東急エージェンシー、セイムトゥー、KADOKAWA、ADKマーケティング・ソリューションズ、サン・アロー、大広の7社に対し、指名停止措置をとると決めた。指名停止期間は今月6日から9カ月間で、大広のみ6カ月間。
東京都も2月28日付で、広告会社の博報堂、東急エージェンシーとイベント制作会社のセイムトゥーを指名停止とした。都はすでに電通、フジクリエイティブコーポレーション、セレスポの3社は指名停止としているため、今回の談合事件で起訴された6社すべてが指名停止となった。
東京オリンピックをめぐる談合や汚職に対して、国も都もJOCもまるで被害者、他人事のようなスタンスだ。もちろん談合をおこない、不正に巨額の公金を手にした広告大手やイベント会社に対しては、徹底的に今後も追及が必要だ。組織委会長の森喜朗まで汚れきったオリンピック絡みの疑惑は、このさい膿を出し切ることが求められる。
だが、電通をはじめとした一部企業の好き放題を罰するだけで良いのか。談合や汚職に関わった企業に対し一定期間入札停止するだけの罰則を課せば許されるのか。電通社長はこのたび、役員報酬3割を6カ月返上すると公表したが、これで幕引きとなるのか。談合や汚職などを許した組織委、ひいては招致した国の責任も問われてしかるべきだろう。
そもそも2013年に、IOC総会で安倍元首相が福島原発事故の影響について「アンダーコントロール」といって世界を欺き五輪招致を強行したのに始まり、エンブレム盗作問題や、国立競技場デザイン変更、ブラックボランティア問題など開催前から問題続きだった。コロナ禍で1年延長してまで開催した本大会は、汚職と談合によって汚れまくった「公金つかみどり大会」と化し、大会から1年半以上が経過してもいまだに日本は世界に恥をさらし続けている。
大会組織委とは名ばかりで、大会運営のノウハウなどなにもなく、裏を返せば「電通頼み」でしか実務が前に進まなかったことも指摘されている。こうしたなかでなし崩し的に電通の好き放題が横行したともいえる。そもそも日本に大会を招致し開催する資格があったのか、改めて問われなければならない。
東京オリンピックは、2013年の招致段階には「世界一コンパクトなオリンピック」と銘打ち、当初の関連予算は7340億円だった。しかし、終わってみれば、昨年12月の会計検査院による報告では1兆6989億円。さらに首都高速道路の整備費など関連経費が約2兆円かかっており、これらを含めれば約3兆7000億円と、当初の約5倍にまで膨れあがっている。打ち出の小槌を振るがごとく公金をジャブジャブ投入したあげく、その金は電通を頭とする一部の大手広告代理店やイベント会社へと集中していった。
リオデジャネイロオリンピックの閉会式で東京大会をPRするため、安倍晋三元首相がスーパーマリオの格好をして土管の中からサプライズ登場したあのシーン。わずか8分間のセレモニーにかかった費用は11億2000万円にものぼるが、このうち8億円は東京都が支出している。
これらはあくまで大会開催にかかった費用の話だが、これから先も競技場などの維持費は別にかかる。国立競技場は、昨年度だけで維持管理費などで約13億円の赤字、さらに、土地の賃借料は約11億円だ。この先もすべて、このような「負の遺産」に税金が費やされていくことになる。
オリンピックをめぐって、想像を遙かにこえる腐敗が横行しており、巨額の公費に群がる一部企業が暴利を貪る構図が浮き彫りとなっている。膿を出し切るまで徹底的な捜査が求められるが、同時に「そこまでしてオリンピックが必要なのか?」という疑問は尚更深まるばかりである。
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/26010