《双方主張には一部誤り指摘も》
トランプ氏はバイデン政権が「誰も見たことのない、おそらくアメリカ史上、最悪のインフレを招いた」と発言しました。これについてアメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、過去にもっと大きなインフレが起きていると指摘し、この発言が誤った情報だと報じています。 また、トランプ氏はバイデン政権で新たにつくられた雇用は、新型コロナが感染拡大する中で失われた雇用を回復しただけだと主張しました。これについてニューヨーク・タイムズは、バイデン政権下では新型コロナの感染拡大で失った雇用を回復したうえで、さらに新たな雇用を生み出したと指摘してこの発言が誤りだと伝えています。 一方、ハリス氏は「トランプ氏が大恐慌以降、最悪の失業率をわれわれに残した」と主張しました。これについてニューヨーク・タイムズは政権交代した際の失業率をあげ「大恐慌以来、最悪の失業率には遠く及ばない」と指摘して、この主張が誤りだと報じています。
CNNテレビ “トランプ氏が30回以上 誤情報の発言”
CNNテレビは暫定的な分析結果として、テレビ討論会でトランプ氏が人工妊娠中絶や移民の問題などを含めて30回以上、誤った情報の発言を行ったと報じました。 このうち、不法移民の人数について、CNNテレビはトランプ氏がバイデン政権下では毎月2100万人以上が国境を超えてアメリカに入国していると主張したものの、2021年2月から2024年7月までの3年あまりで合法的な入国なども含めて確認されたのは、およそ1000万人だったとしています。 一方、CNNテレビはハリス氏については誤った情報の発言は1回だったとしていますが、誤解を招いたり重要な文脈を欠いたりした、複数の主張はあったと指摘しています。
《討論会後の関係者の反応》
トランプ前大統領は討論会を終えたあと、会場近くのプレスセンターに姿を見せました。大勢の報道陣に取り囲まれたトランプ氏は「今までで最高の討論会だった」と述べました。アメリカのメディアによりますと、討論会のあと、候補者本人がプレスセンターに姿を見せることは少なく、「トランプ氏が突然、姿を見せた」と驚きをもって伝えています。一方で、ハリス副大統領はプレスセンターに姿を見せませんでした。 共和党の副大統領候補、バンス上院議員もプレスセンターで取材に応じ、「ハリス氏の発言の中身はスローガン以外にはほとんど何もない。彼女は3年半副大統領をつとめているのに、自身の実績について話すことができない」などと批判しました。 一方、ハリス陣営によりますと、民主党の副大統領候補のウォルズ・ミネソタ州知事は選挙活動のため、アリゾナ州に行く予定だとしていて、プレスセンターには姿は見せませんでした。 民主党のニューサム・カリフォルニア州知事は報道陣の取材に、「討論会はハリス氏が部屋に入ってきて握手したときからその場を支配し、トランプ氏は防戦一方になった。ハリス氏だけではなく、アメリカ国民や自由、民主主義にとっても大きな夜になった」と述べ、ハリス氏を絶賛しました。また、アメリカの人気歌手のテイラー・スウィフトさんがハリス氏への支持を表明したことについて、「彼女は文化的な象徴で、とても大きなことだ」と述べて歓迎しました。
《米メディアの反応》
CNNテレビによりますと、討論会を視聴した605人を対象に行った調査では、
▽「ハリス氏がよかった」と答えたのは63%
▽「トランプ氏がよかった」と答えたのは37%
だったということです。
討論会前に同じ人に対し「どちらのほうがよい討論を行うと思うか」と質問したところ、半分に割れていたとしています。
また、ニューヨーク・タイムズは「ハリス氏は検察官としてのスキルを誇示し、トランプ氏をいらだたせるため、あらゆる機会をとらえた。トランプ氏は終始、防戦にまわった」と論評しています。
AP通信は「ハリス氏は身ぶり手ぶりと表情を使ってトランプ氏に立ち向かい、彼の答えがばかげているということを表現した。トランプ氏のとげとげしい政治からの脱却を求める有権者への救いとなるようにみずからを演出することに余念が無かった」と伝えています。
一方、FOXテレビは、「トランプ氏は司会者とも戦った。彼に対するファクトチェックに余念がない一方で、ハリス氏が事実をわい曲したことはそのままにしていた」と伝え、主催したABCテレビの進行を批判しています。
《2回目の討論会の可能性は》
2回目の討論会の開催についてハリス氏の陣営は討論会後、声明で「ハリス氏は準備ができている。トランプ氏はどうだろうか」と前向きな姿勢を示しました。
一方、アメリカメディアによりますとトランプ氏は、記者団に対し「ハリス氏側は負けたからもう1回、討論したいんだ。われわれはそれについて検討する」と述べるにとどめました。