こちらの記事からの転載です
https://indeep.jp/laic-mechanism-of-earthquake-precursors/
日本人研究者たちが「大地震の前兆」を明らかに。査読済み論文として発表される。地震の前兆は地球と大気圏と電離層の全部に一気に起こる
投稿日:2024年9月2日
宇宙と地球の共鳴のような…
日本人 科学者による「地震の前兆を特定した」という内容の査読済みの論文について海外のメディアが伝えていました。
論文はこちらにあります。
この研究の理論の根幹となるものは、
「地圏 - 大気圏 - 電離圏結合理論」
というもので、英語では LAIC と略されるのが普通ですが、わかりにくくなるので、日本語で通します。
これは説明が難しいところですが、遡りますと、2011年の東北の震災を起こした地震について書いた以下の記事の後半に出てきます。
(記事)衝撃のデータ: 3月11日の地震の前に観測された日本上空の赤外線と電子量の急激な変化 In Deep 2011年05月20日
ここでは、「 2011年3月11日の地震の数日前から、震源の上空の電離層全体の電子量が劇的に増加していた」ことを示した研究をご紹介しています。
それと、震源の周辺上空で膨大な赤外線の放出が確認されていまして、平たくいえば「加熱されていた」状態でした。
2011年3月10日から3月12日までの赤外線のエネルギー量の変化
つまり、この時に観測されたことは、
「地震の発生前に上部の大気圏や電離層に大きな異常や攪乱が起きていた」
ということでした。
地面のほうではなく、「先に空のほうに異常が示されて」いたのです。
それで、先ほどの、地圏 - 大気圏 - 電離圏結合理論という概念ですが、「地圏」、「大気圏」、「電離圏」は、それぞれ以下のように説明されます。
地圏
内部を含む地球の地殻のことです。地球全体といっていいのだと思われます。
大気圏
地球の大気の層で、要するに、「地上から宇宙までの空間全部」ということになります。
電離層
Wikipedia の説明だと以下のようになります。
> 地球を取り巻く大気の上層部にある分子や原子が、紫外線やエックス線などにより電離した領域である。…電離層は熱圏および中間圏内(高度約 60kmから 500kmの間)に位置する。
非常に大雑把に書けば、それぞれ以下のようになります。
そして、地圏 - 大気圏 - 電離圏結合理論という概念は、
「このすべてに大地震の前に異常が検知される」
といっていいものだと思われます。
地震(特に大地震)の発生の前には、この地圏も大気圏も電離圏も、すべてに変化が起きるのです。
なお、この変化に対して、「地上で起きた地震からのエネルギーが上空に昇ったのではないか」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、しかし、地震の前兆として、
「地圏と大気圏と電離圏に同時に異変が起きる」
ことも確認されています。
また、電離層の異常については、「地震発生の何日も前に確認される」のです。
何が最も大きな地震の要素かについては、私自身は、宇宙からの要素(宇宙線など)だと思っていますけれど、要素はともかく、
「地震の前兆は、電離層と地球の大気と地殻すべてに異常や変化が出る」
のだと知りました。
なお、論文によれば、地震の前に変化が起きていたのは以下です。
地震の前に異常が起きていた項目の一部
・大気温度
・地表潜熱流束
・外向き長波放射
・電離層擾乱
mdpi.com
また、
> 電離層の擾乱などの兆候は地震発生の 6日前にはすでに認識されていた。
とあり、地震発生のかなり前から電離層に異常が出るようです。
なお、この「地震前の電離層の異変」については、京都大学の 科学者たちが 2019年に論文で発表した内容について、こちらの記事でご紹介したことがあります。
今回の論文について取り上げていた海外メディアの記事をご紹介したいと思います。なお、研究を率いたのは、早川地震電磁気研究所の早川正志氏という方と電気通信大学の芳原容英(ほうばら やすひで)教授です。
このような取り組みが、少しでも大地震の前兆をとらえるシステムの開発につながればいいとは思います。…けれど、地震には他の要素もありますからね。太陽フレアとか。
「太陽フレアは大地震を誘発する…」という記事では、2020年にネイチャー誌に掲載された論文をご紹介しています。ここで取り上げた論文によれば、巨大な太陽フレアが大地震の発生と関係していることはほぼ間違いないようです。
ですので、地震のメカニズムにはいろいろな要素があり、複雑ですが(要素の多くは、空 / 宇宙からのもの)、それでも、やっと「地震現象は地圏だけでの現象」というところから科学の世界は少しずつ離れていくのかもしれないですね。
ここから記事です。実際の記事は、専門語を英語の略語で示していますが、わかりにくいですので、全部日本語にしています。また、太字はこちらで施しています。