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総裁選より能登救済に全力注げ 復旧遅れる能登半島を襲った豪雨 「このままでは助かる命も助からぬ」 集落孤立し仮設も水没
2024年9月27日
元日の震災からの復旧作業が続く石川県能登半島が21、22日、線状降水帯の発生による記録的大雨に見舞われ、奥能登の各地で大規模な河川氾濫、土砂崩れ、住宅浸水が発生した。震災から約9カ月、荒廃した被災地で必死になって、壊れた家や事業所を修理し、あるいは避難所からやっと仮設住宅に入居して生活再建に踏み出した矢先、ふたたび苦しみのどん底にたたき落とされる惨事となった。震災からの復旧が遅れ、崩れた崖や護岸も応急処置段階にとどまる一方、人々に対する公助を打ち切り「自立」を促してきた最中の被災であり、あらゆる点で複合的な災害といえる。なによりも震災を生き延び、歯を食いしばって地元の再建に望みを繋いできた人々にさらなる苦痛と絶望をもたらしており、国や行政による大胆な財政措置に加え、被災者への手厚い保護と支援が急務となっている。
能登半島を襲った大雨は、20日夕方の降り始めから23日夕方までの降水量が輪島市で508㍉、珠洲市で398・5㍉となり、両地点での総雨量はいずれも9月の月降水量の平均値の2倍をこえた。崖崩れや道路崩落によって輪島市、珠洲市、能登町の115の集落が孤立し、1088人が避難を強いられた。24日時点でも56カ所で集落の孤立が続いており、約3500戸で停電、約5000戸で断水となっている。25日までの死者は11人。現在も行方不明者の捜索が続いている。
さらに輪島市、珠洲市では、9つの地域で仮設住宅が床上浸水し、人々は再び住まいを失った。室内に水とともに土砂が流れ込み、避難所でも水や電気、食料が途絶した。
輪島市の男性(70歳)は、5月末に仮設住宅に入居して妻と娘の3人で暮らしてきたが、21日の大雨で付近を流れる河原田川が氾濫し、男性一家を含めて300人以上が暮らす仮設住宅一帯が完全に水没したという。
電話で状況を聞くと、「浸水の高さは床上80㌢。私も胸まで泥水に浸かり、家族3人が家の中を泳ぐようにして家の外に出た。寝る場所もないのでその晩は車中泊。震災後に仮設に入る前まで身を寄せていた妻の実家も今回の豪雨で土石流と一緒に流れてきた大木が直撃して住めなくなったため、今は被害が少なかった弟の家に間借りしている。それでも停電中なので、また震災直後と同じランタン生活だ。夫婦2人ならとっくに心が折れて気力を失うところだが、幸い娘が残って私たちを支えてくれるから、少し頑張ろうという気持ちになっている。ようやく落ち着いた生活が始まったばかりなのに…もうやけくそ笑いするしかないですよ」と話す。
元日の震災で自宅は全壊。5カ月間の避難生活を経て、仮設住宅に入るさい公的支援で買い揃えた冷蔵庫、エアコン、炊飯ジャー、電子レンジ、洗濯機、テレビなどの家電製品や家財道具はすべて水没した。部屋は壁まで泥に浸かったが、絶望感とたたかいながら家族で掃除しているという。
さらに、停電の復旧まで1週間から10日かかると伝達されており、冷蔵庫が使えないので食事もレトルト食品やカップラーメンで凌ぐほかない。震災後に営業を再開していた輪島市内の飲食店もふたたび休業に追い込まれ、営業中のスーパーも冠水。残った店に人が殺到したため、買い出しに行っても弁当やパンなどの食料品は手に入らない。住居を失った人々が水も電気も使えない避難所に身を寄せて夜露を凌いでいるという。
「これまで行政は“仮設住宅に入ったら2年後までに自立してくれ”といってきた。だが、家財も貯金もなくなった人たちがどうやってここから生きていくか。一人暮らしの年寄りも多く、水没した仮設住宅の泥かきや掃除も自力では不可能だ。“あとは自力で”といわれたら、みな県外に出て行くだろうし、命を失う人も出る。なんとかして公の力で片付けて、最低でも仮設住宅での暮らしが再開できるようにしてもらわなければ、私たちは生きる道を完全に閉ざされてしまう。落ち着いた生活ができるまで、これからまた何カ月かかるのか考えただけで気が遠くなるが、こういうときにこそ公の誠意を見せてもらいたい」と切実な思いを口にした。
この仮設住宅は、洪水の浸水想定区域に含まれていたという。住民たちは「入居するさいに“川が氾濫したら浸水するのではないか?”と聞くと、県の担当者は“前例がないから大丈夫”といっていた。市内にまとまった土地がないことはわかるが、浸水想定区域に仮設住宅を建てたのだから住民の“自己責任”ではないはずだ」と話す。そのうえ震災から時が経つとともに国も県も「支援の時期は終わり。今後は自立を」という姿勢を見せてきたため住民たちの警戒心は高い。
今後について「改めて別の場所に仮設住宅を整備する」という方針や「水没した仮設住宅をクリーニングして使う」という話も飛び交うなど情報が錯綜しており、被災者の不安を増幅させている。
輪島市は25日、今回の豪雨災害で「みずからの資力では住宅を確保することが困難な方」を対象に、仮設住宅への入居申請の受付を開始したが、住宅の被害度調査を経て罹災証明書の交付を受けなければならず、申請できるのは原則として「半壊以上」と認定された世帯のみ。被災時の居住地が仮設住宅であった場合は申し込みができないことになっている。
続きます