「現在、追加利上げするような環境にない」と石破首相-日銀と連携確認
2024年10月2日 17:09 JST
更新日時 2024年10月2日 20:50JST
石破茂首相は2日、日本銀行の金融政策について、現在、追加の利上げをするような環境だとは思っていないと述べた。日銀の植田和男総裁との会談後、官邸で記者団に語った。
石破首相は、政策金利の引き上げに関して「政府としてあれこれ指図をする立場ではない」としながらも、「個人的には現在そのような環境にあるとは思っていない。追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と語った。
「これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展していく」とし、植田総裁には「デフレの脱却に向けてこれから先経済が推移していくことを期待している」と伝えたという。「市場の動向を緊張感を持ちかつ冷静に注視をしていくとともに、市場とも丁寧にコミュニケーションを取っていく。このために互いに緊密に連携するということを確認をした」とも説明した。
植田総裁は海外経済の不透明感の強まりや不安定な市場動向への警戒感を強めているが、日銀の見通しに沿って経済・物価が推移すれば、政策金利を引き上げて金融緩和の度合いを調整する方針を示していた。デフレからの完全脱却を最優先課題と位置づける石破首相が利上げに慎重な姿勢を明確に示したことで、日銀の再利上げのタイミングが先送りになるとの見方が強まることは必至だ。
石破首相の発言後、外国為替市場では円相場がドルに対し下げ幅を拡大。一時1ドル=144円89銭と、先月27日以来の安値を付けた。
これに先立ち植田総裁は、会談では政府・日銀が緊密に連携することで一致したとし、石破首相から金融政策について具体的な指示はなかったと発言していた。
植田総裁は金融政策について、「極めて緩和的な状態でわが国経済をしっかり支えていく」との考えを示した。経済・物価の見通しが日銀の見通し通り実現し、見通しに沿って経済が動けば「金融緩和度合いを調整していくことになるが、本当にそうかどうかを見極めるための時間は十分ある」と述べた。
その上で、日銀の正常化に向けた方針は9月の金融政策決定会合後の記者会見で発言した内容から「変化はない」と説明。石破首相からも「金融政策について具体的にこうしてほしいっていうような話はなかった」と語った。
政権発足後、日銀総裁が新首相と意見交換のために官邸を訪れるのは通例だが、今回の植田総裁の訪問は、石破首相の就任翌日という異例の早さだった。
意思疎通
石破首相は1日の就任会見で、金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるものとしながらも、日銀に対し、「デフレを脱却していくために、現在の姿勢というものを期待感を持って見ている」と発言。「これから先も緊密な連携の下に、金融緩和の基本的な基調というものは維持されるべく、期待をしながら見守っている」との見解を示していた。
赤沢亮正経済再生担当相は2日午前の会見で、首相が利上げに慎重なのは「デフレを完全脱却したと思っていないから。私どもがそう思っている間は日銀には慎重にやっていただくということを共有していただきたい」と発言。早期に首相と植田総裁が意思疎通を行い、デフレ脱却最優先の方針を共有してもらいたいとしていた。
植田総裁は、政府・日銀の共同声明(アコード)の扱いについてもこの日の会談で話題に上らなかったことを明らかにした。一方、石破首相は、2013年に発出した政府・日銀はアコードに沿って「引き続きデフレからの早期脱却、持続的な経済成長の実現に向け、政策運営に万全を期す」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-02/SKPX6CT1UM0W00?srnd=cojp-v2