「業者を増やせ」 災害ボランティアも怒り
床上まで泥水に浸かった幼稚園(認定こども園)の修復のために、全国各地から集まった災害ボランティアたちが集団で床板剥ぎの作業をしていた。業者の数が足りない現在、奥能登での復旧や生活基板再建の主力は、このように全国から集まるボランティアたちだ。
園長先生によると、園に隣接する自宅とお寺は地震で全壊。幼稚園の建屋はガラスが割れた程度で済んでいたが、9月の水害で1階が泥水に浸かり、泥をとり除いて掃除をしてもカビ臭い。自宅から家財をとり出すときにお世話になった災害ボランティアの申し出を受けて、床板や壁紙を剥がすと、案の定、壁も床下も泥が入り込みカビだらけになっていた。行政からアナウンスはなく、経験豊富なボランティアの指摘で初めてわかったことだ。
「現在、約70名の子どもたちを預かっており、2階だけで保育している。保護者さんにとっては子どもを預ける場所がなければ働くこともできない。私も職員たちも家がなく、仮設住宅から園に通っている。水害でとどめを刺された気分になっていたが、ボランティアのみなさんのおかげで前を向くことができている」という。
だが、まだ施設は新しく、改築には膨大な費用がかかる。認定こども園の場合、受けられる支援には2種類あり、「教育」の部分では12分の7、「保育」の部分で3分の2が国から補助されるという。それも国(子ども家庭庁)の査定がおこなわれ、総事業費のうち必要最低限の部分しか支援対象にはならない。そのうえ会計監査もおこなわれるため、支援が給付されるまでには相当な時間がかかる。
震災直後から輪島で支援を続ける災害ボランティアの男性は、「どこも工事待ちのなかで、何のつてもなければ工務店を見つけることもできない。しかも、改修のために仮に1億円の借り入れをして、そのうち6割の補助が受けられたとしても4000万円は自己負担だ。ならば、その分母を少しでも軽減できればという思いで、ボランティア仲間の力を借りて作業させてもらっている」という。さまざまなボランティアチームと連携し、震災直後から自前のスーパーハウス(プレハブ)を現地に持ち込み、食事から寝泊まりまで自己完結する徹底ぶりだ。
別の災害ボランティアの男性は、輪島の現状について「豪雨災害後、国のプッシュ型支援は何もない。これまで以上に県外から業者を呼ぶしかないのに、国はそれに必要な予算を付けていない。台湾では数時間で避難所を設置し、すぐに応急住宅を建てている。それが日本にできないはずはない。やる気がないだけだ。解体業者もピンハネ構造がひどく、全国から来る業者には3~5次下請けまでいる。県外からやってきてもほとんど利益がないので“赤字でやってられない”といって途中で放り出して帰ってしまう業者もいるほどだ。こんな構造は即座に改めるべきだ」と語気を荒げて語っていた。
さらに「なによりも必要なのは、専門技術をもった業者を大量に投入することだ。素人が何人来てもできることは限られている。ボランティア10人が何日もかけてやることでも、予算を組んで業者にやらせれば1日で終わる。能登半島でこんなに悠長にやっていたら、次に大きな災害が起きたら日本は潰れてしまう。なぜそんなことが政治家にわからないのか。このままでは避難者たちは、また体育館や公民館で正月を迎えることになり、災害関連死はものすごい数になる。県知事は年末までに2万人のボランティアを募集しているが、ボランティア頼みの復旧・復興という発想自体がそもそもおかしいのだ」と胸の内を語った。必死で現場で働く人ほど危機感と怒りは強い。