日本の高校生がいたミャンマー東部の詐欺拠点、外国人1万人か…スタンガン・暴力・注射で強要
2025/02/20
ミャンマー東部で、日本人が中国人組織などと特殊詐欺に関与している疑いが浮上している。拠点は数十か所とされ、国際的な詐欺に加担させられている外国人は1万人に上るとみられている。日本の高校生2人が現地で詐欺に関与させられていたことが判明しているが、さらに多くの日本人が滞在している可能性がある。(バンコク支局 佐藤友紀、中部支社 小林岳人)
「8人ほど日本人いた」保護の高校生
タイの国境に近いミャンマー東部・ミャワディには、特殊詐欺などの拠点となっている建物が点在している。タイ政府高官は19日、現地で詐欺への加担を強要されている外国人が、25か国・地域の約1万人に上るとの見方を明らかにした。
タイ政府は12日に260人以上の外国人を保護している。今後も順次、タイ側に移送して、身元や現地の状況について確認を進めるというが、この中に日本人が含まれるかは不明だ。
タイ警察や日本の警察関係者によると、愛知県の男子高校生(16)は昨年12月、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で「海外での仕事がある」と誘われ、タイへ渡った。バンコクの空港で迎えの車に乗り、同月3日、ミャンマー東部ミャワディに入った。
現地では、中国人の上司の下、日本の高齢者に警察官を装って電話する特殊詐欺を強いられたといい、「命令に背くと電気ショックによる暴行を受けた」「ほかに8人ほど日本人がいて、同じ仕事をしていた」と説明したという。高校生は今月16日に帰国した。
ミャワディには、オンラインゲームで知り合った男に家出を促された別の男子高校生(17)が渡航し、詐欺電話の「かけ子」をしていたことが判明している。高校生は「上司は日本人で、名簿を基に電話した。ノルマがあった」と話したという。滞在先はホテルの従業員寮のようで、愛知県の高校生の拠点とは10キロ以上、離れていた模様だ。
タイの警察幹部は、現地には数十か所の詐欺拠点があり、今も約20人の日本人がいるとの見方を示した。
上役に中国語操る男…逃亡男性が証言
タイに逃れた複数の外国人が取材に応じ、現地の詐欺組織の実態を語った。
「成果がなければ罰を受ける契約書への署名を命じられ、拒否したらスタンガンを10分以上あてられた」。昨秋まで2か月監禁されたという20歳代のバングラデシュ人の男性が涙ぐんだ。
ドバイの仲介業者を通じ、タイでの仕事に応募した。オンラインの面接を経て入国したが、国境の川沿いに連れて行かれ、対岸まで川を歩いて渡らされた。ミャワディでは複数の拠点を転々とし、スリランカ人やエチオピア人らと共に1日17時間、SNSなどでロシア人やトルコ人らに偽の投資を呼びかけるよう強要された。
ある拠点の上役は、「チンギス・ハーン」と名乗る中国語を操る男で、「この建物には8人ほど日本人がいる」と語った。拠点では中国、台湾、香港、日本を担当する各チームのほか、東南アジア、中東・アフリカのチームに分かれて詐欺を働いていたという。
1月に逃れたウガンダ人の女性も、夫と共に出稼ぎに来たタイから連れ出され、エジプトやモロッコなどに詐欺電話をかけるよう迫られた。拒否すると何度も殴られ、注射も打たれ、幻覚を見た。夫は中国人から「妻の分も働け」と言われ、現地に残っているという。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250219-OYT1T50206/